2016年10月7日金曜日

Netflix『ルーク・ケイジ』なぜルークはなぜフードを被るのか?

休みを利用して、朝から『ルーク・ケイジ』を8話からラストの13話まで鑑賞。『デアデビル』ほど派手なアクションシーンはなく、『ジェシカ・ジョーンズ』のキルグレイヴほど圧倒的なヴィランがいるわけでもない本作。なので、序盤は「これ、ドラマとしてなかなかキツいな…」と思いながら見ていたけれど、終盤にダイアモンドバック(コットンマウスよりヴィランらしい!)が登場した辺りからはストーリーもアクションも格段にテンポよくなり、全エピソード通して見るとなかなかどうして楽しめた。

中でも一番ヤラれたのは、ウータン・クラン(ちなみにドラマ中でルークがウータンの1stを聞いているシーンがある)のメソッド・マンがゲスト出演した12話。このエピソードではメソッド・マンが強盗に遭遇するものの、たまたまその場に居合わせたルークに助けられる。そしてその後出演したラジオでルーク(とハーレムの住民)に向けてラップを披露するのだけど、そのリリックがこのドラマのテーマを分かりやすく表している。以下、その抜粋。

「秩序なき世界で誰を頼れるというんだ?」「みんなで立ち上がろう 警察は間違ってる」「彼は俺たちの最後のヒーローさ」「俺たち黒人のヒーロー」「トレイボンのためにも」

トレイボンとは、2012年に殺されたトレイボン・マーティンのこと。トレイボンは、黒人でフードを被っていたことが発端となって殺されたと言われている。ここでメソッド・マンがラップしているのは、このトレイボン・マーティン事件以後も不当に黒人を虐げる警察や司法への不信感と怒り、それに続く「ブラック・ライヴズ・マター」運動への連帯、そしてそんな世界(例えそれが現実でなくとも)に現れた、社会的不正義と戦うルーク・ケイジという「黒人」ヒーローへの称賛。そう、このドラマの主人公は黒人でなければならなかったし、何があろうともフードを被っている必要があった。警察から不当に疑われ、あろうことか銃を向けられるルークはトレイボンに代表される警察に不当に命を奪われた黒人達を、「防弾仕様」のルークを真似て穴の開いたフードを着て町を闊歩するハーレムの人々はフードを被ってデモ行進をする現実のアメリカの市民を、このエピソードではそれぞれトレースしている。怪力と鋼の体の持ち主という一見バカみたいな設定のヒーローは、アメリカの闇を告発する、黒人社会の代弁者だったのだ。


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