2017年5月13日土曜日

M・ナイト・シャマラン『スプリット』

みんな大好き、シャマランの新作。早速観に行ってきました。シャマランの映画だけはネタバレがない方が絶対に楽しめるので、これから観るという方はそっとタブを閉じて下さい…。


ジェームズ・マカヴォイ演じるケヴィンが23の人格を持っているという設定は、それだけでかなり面白い。『X-MEN』シリーズでのプロフェッサーばりの坊主姿で、会話中に瞬時に人格を切り替えるマカヴォイの演技は、正に圧巻。ただ、この映画の根底にあるのは、そうした複数の人格を持つに至った原因である子供時代の虐待の経験(この部分においてケヴィンは、もう一人の主人公・ケイシーと共鳴する)であり、今作を振り返った時、まず最初に痛みや悲しみを感じる理由はこれだろう。そう、これはシャマランの他の作品と同じく、本質的にはホラーやスリラーといったジャンル映画とは、少し趣の異なる作品である。原題の通り「split」(分裂する、割れるの意)してしまったのは日本版のポスターにある「恐怖」などではなくケヴィンの人格であり、また同時に虐待を受けた時に粉々に砕け散ってしまったケヴィンやケイシーの心なのだ。 

しかし、逆にそうした出自から"ザ・ビースト"のような特殊な能力を持った人間(を超えた存在)が生まれるのではないかという、シャマラン的には通常運転だが、他の映画監督からすればあまりにも大胆な仮説・発想は流石である。この仮説・発想の有無が、「他の監督でもあり得る」ような映画の枠組みから逸脱し、作品にシャマランという特異な映画作家の存在を刻印する。こうした「普通ならあり得ない」と却下されるようなものを映像にしてみせる気概こそが、彼の映画最大の魅力だとまたしても思い知らされる。

映画ファンの方ならご存じかと思うが、シャマラン自身がツイートした通り、彼の次作は2000年に公開されたMCU以前のヒーロー映画の傑作である『アンブレイカブル』と今作の続編となるようだ。この報を受けて、「シャマラン・ユニヴァース」なる用語も既にちらほらと目にする。今作からは、ケヴィン(=彼の23の人格+"ザ・ビースト")とケイシーが出演するそうだ。現在発表されているタイトルは、『GLASS』。『アンブレイカブル』を観た方なら、誰が出てくるのかもうお分かりだろう。公開予定の2019年まで、死ねない日々が続く。


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